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少し驚いて、声掛けられた方に向き直る。
スーツ姿で、少し怪訝そうな顔をした愛美がいた。
極力、平静を装って笑顔を作って答える。
「愛美さん、お久しぶりです。」
「ああ、よかった。
スーツ姿の人ばかりだから、
間違えたらどうしようかと思ってました。」
「いえいえ。
こちらから声をかけるつもりだったのに、
すみません。
お元気でしたか?」
「ええ。でも色々と大変でした。」
「では、立ち話もなんですから、
まずはお茶にしましょうか。」
「はい。」
世間話をしながら、
ラブホテル街の方向に向かって歩きはじめる。
途中にあるカフェに入り、
それぞれコーヒーと紅茶を注文した。
店内が少し混んでいたので、
隅の方のカウンター席に、横並びで座る。
「改めて、お久しぶりです。」
「お久しぶりです。」
という、なんだか妙な挨拶から、
愛美の怒涛の自分語りが始まった。
本当はもっと早く逢瀬の
アレンジをお願いをするつもりだったこと。
しかし、前回の逢瀬の直後に、
夫がリストラに遭ってしまい、
しばらくセックスどころではない状況だったこと。
ようやく夫の再就職先が決まり、
子供の様子も含めて、
家の中が落ち付いてきたこと。
そんな話を、
お互いの飲み物のカップの底が乾くほどの時間、
ニコニコとした表情のまま聞くことになった。
ようやく話したかったことを全部吐き出したのか、
視線を外して少し恥ずかしそうにする愛美。
そんな頃合いを見て、彼女に移動を促した。
「さて、そろそろ行きましょうか。」
「あ… はい。
今日もよろしくお願いします。」
店内でランチ用のサンドイッチと飲み物を買い足し、
少し白けたような空気が漂う、
午前中のラブホテル街に向かった。