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麻実 初逢瀬(その13)

バスルームで身支度を整える。
といっても、シャワーは夕食前に浴びたので、
歯を磨くだけだ。

歯ブラシを使いながらふと鏡を見ると、
私の背後にくっついて、
頭の横から顔をのぞかせている麻実と
鏡越しに目があった。

彼女の目が笑っている。

「どうしましたか?」

「えへへー。
なんか楽しいです。」

「顔に書いてありますよ。」

「えっ、そうですか。」

「今からしかつめらしい顔してもだめです。」

「えー(笑)」

歯を磨き終わって、口をすすぐ。
麻実の方に向きなおって、
腰に手を回し、軽くキス。

眼を閉じてそれを受け入れ、
私の身体に腕をまわしてくる彼女。
すっかり恋人同士の甘い雰囲気だ。

これはこれで楽しいが、
これ以上恋愛的な雰囲気を深めてはいけない。
結局、最後につらい思いをさせてしまう。

唇を離し、
少し素っ気ない素振りでバスルームを出る。

逢瀬用のお道具袋を漁り、
底に埋もれていた衣装を引っ張り出す。
まだ封も切っていなかったが、
値札だけは剥がした。

バスルームで待っていた麻実に、
袋ごと手渡して言う。

「これを着て、出ておいで。」

彼女が袋を開ける前に、
バスルームの扉をそっと閉めた。

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斉藤 ジュン

Author:斉藤 ジュン
逢瀬を重ねるたびに快感を深めていく女性の姿を綴っていきます。

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