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梓(あずさ)から、
再び逢瀬を求めるメールが届いたのは、
初めての逢瀬から2ヶ月半ほど後だった。
その間に季節は進み、初夏の終わり。
何度かのメールのやり取りをして、
スケジュールを調整し、
2週間後の逢瀬の日程が決まる。
「何かご希望はありますか?」
「いえ、特にありません。お願いします」
そんなメールのやり取りをしながら、
逢瀬の当日を楽しみに待った。
当日は、梅雨シーズンの真っ只中らしく、
雨の中での待ち合わせ。
夕方の都内のJR駅の改札は、
近隣のオフィスビルからの帰宅客で混み合っている。
待ち合わせ場所に約束の時刻より10分ほど早く着いた私は、
念のために送ってもらった梓の服装を確認して、
帰宅客を吸い込むばかりで、
出てくる人のほとんどいない改札口を眺めていた。
約束の時刻まで5分ほどになったところで、
見覚えのある黒いセルフレームの眼鏡の女性が、
人の波に逆らって改札口に向かってくるのが見えた。
改札口をくぐる前に、
梓も私のことに気付いたようだ。
にっこりとした笑みを私に送り、
改札を抜けて私のところに真っ直ぐ向かってきてくれた。
ラッシュ時間帯の喧騒の中、
互いの声が届く距離に近づくのももどかしいように、
彼女から声をかけてくれる。
「こんばんは!」
「こんばんは。お久しぶりですね」
「お久しぶりです」
「すぐにわかってくれて嬉しいですよ」
「ジュンさんもわかってくれましたよね?」
「状況的に私の方が有利ですから」
「ジュンさんは、相変わらずですね(笑)」
立ったまま、そんな他愛もないあいさつを交わす。
「…では、行きましょうか?」
「はい。今日もお願いします!」