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帰宅ラッシュ中の都心の地下鉄の駅での待ち合わせ。
私は少し焦っていた。
この駅を利用したのは半年ぶりぐらいだったが、
かつて1か所だけだった改札口が増設されて、
2か所になっていた。
事前にメールで、
「この駅は改札口が1か所だけなので、
そこで待ち合わせましょう。」
というやり取りをしていたのだが、
待ち合わせのために駅を降りてみて、
初めて様子が変わっているのに気が付いた。
とりいそぎ、女性に注意喚起のメールを送るが、
返信が戻ってこない。
彼女が家を出るときのメールは来ていたので、
ドタキャンはないと思うが、
待ち合わせ場所を探して迷うかもしれない。
仕方ないので、2か所ある改札口を、
数分ごとに行き来して、
事前に連絡してもらった服装の女性を探す。
待ち合わせ時間を過ぎて、
改札口を3往復ほどしたときに、
ホームからではなく、
地上に通じる階段から探していた服装の女性が姿を現した。
焦りを落ち着かせるために一呼吸置いてから、
改札口の前で佇んでいる彼女に声をかけた。
「…理津子さんですか?」
眼鏡越しにちょっといぶかしげな視線を向ける彼女に、
精一杯の笑顔で応える。
「はい。ジュンさんですね?」
「ええ、はじめまして。
ようこそいらっしゃいました。」
「今日はありがとうございます。
近くで用事があったので、隣の駅から歩いてきました。」
「あ、そうだったんですね。」
最近では珍しいと言っていい、
染めていない様子の黒髪のロングストレート。
ほとんどすっぴんに近いような薄化粧ながら、
きめが細かい白い肌のかわいい女性だ。
少し表情が堅いのが気になるが、
思い切って確認してみる。
「最初にお尋ねしますね。
…私で大丈夫ですか?」
「…ええ、よろしくお願いします。」
理津子は、一瞬考える顔をしてから、
少し微笑んで答えてくれた。
心の中でガッツポーズを作りながら、
表面上は冷静な表情で、
彼女をホテルの方向にエスコートする。
「それじゃ、早速参りましょうか。」
「はい。」